ご挨拶

花谷 亮典

第48回日本てんかん外科学会

会長 花谷 亮典

鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科脳神経外科学 教授

この度、2025年2月6日(木)と7日(金)の両日に、第48回日本てんかん外科学会を東京で開催させていただくことを大変光栄に存じております。

2014年に当教室が第37回本学会を主催させていただいて以来、11年の間にてんかん外科のmodalityやてんかん外科診療を取り巻く環境はさらに急速に変化しました。てんかん波の広がりをSEEGによってzoneからnetworkとしてとらえる戦略が普及し、DBSによる緩和治療や複数の新規抗てんかん発作薬が認可されてきました。てんかん治療はまさに第37回テーマのごとく多選択肢時代にあります。

それぞれの治療エビデンス確立にむけた動きが活発に行われていますが、その中で、ややもすると、エビデンスに基づかなければ語ることすら憚られるような風潮も感じます。当たり前の結果を得ることはとても重要ですが、これまで皆が知っていた・気づいていた結果だけがメタ解析により有意差を持って語られ、その他の事象への意義付けが敬意を持って顧みられる機会が減っていると思うことが多々あります。今日、我々が選ぶことができる治療選択肢も、患者ごとに悩み・迷い・挑んできた先達による経験と工夫の蓄積に他なりません。てんかん外科の分野においても、個人の発想や適切な手順を踏んだうえで行う創意工夫の重要性は、これまで以上に高まっていると言えます。

また、新型コロナ感染症の蔓延下において、これまでのルーチンがほんの数年途絶えるだけで、経験の蓄積や申し送りの記憶が曖昧になることを体感された先生方も多いのではないでしょうか。正しく行われた個人の経験を他者に伝え、経験を増やしてエビデンスにつなげる。この流れを改めて思い返すべく、今回の学術集会のテーマを「経験を紡ぐ」としました。本会では、先生方から「経験主義的てんかん外科」を大いにご披露いただきたいと願っています。そして、適切な議論を通して、個人や施設のチップスを共有の知識とする会にできればと考えております。

さらに、多診療科・多職種による診療や、働き方についても議論を深める必要がある昨今です。本会においてもその場を提供したいと思います。てんかんに関連する多くの医師や研究者の先生方、そして医療従事者の方々のご参加を心よりお待ちしております。

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